土佐刃物の歴史と特徴
土佐打刃物発祥の地、土佐山田町。
土佐刃物づくりの歴史は古く、鎌倉時代後期、徳治元年(1306年)大和国より移り住んだ刀鍛冶 五郎左衛門吉光派が室町末期まで繁栄し、戦国の乱世で武具刀剣等の需要に応じていました。
また、1590年に土佐一国を統一した長宗我部元親が記させた「長宗我部地検帳」には、399軒の鍛冶屋が 存在していたことが記録されています。
江戸時代初期の元和改革(1621年)土佐藩の財政窮迫の復興として森林資源の確保および新田開発などの振興政策を受けて農林業用打刃物の需要が一気に拡大します。
この頃から刃物生産技術が著しく発展をとげ、量産体制および品質の向上が図られ、土佐打刃物が確立されました。
土佐打刃物は現在の土佐山田町の刀鍛冶から習って、鎌、鉈、のこぎり、鍬など農山林具としての 道具を中心に発達したといわれており、今でも全国有数の刃物産地として認められています。
土佐刃物の特長は、日本刀と同じ高品質の刃物鋼を用いることにあります。日本刀のように鍛えることにより、金属組織を微細化し、切味・耐摩耗性・刃の粘りを与えています。
また、強度や重さを必要とする部分を厚くし、刃は理想の機能を発揮するよう適切な薄さに仕上げています。
刃物の鋼材の種類
青紙スーパー
特殊溶解技術を駆使した高級刃物鋼、青紙1号よりさらに硬く、ねばり性にも優れている
青紙1号
白にタングステン、クロム等の特殊元素を配合し、その切れ味及び耐久性を向上させている
青紙2号
青紙1号より硬度を少し下げ、よりねばり性を向上させているため使い易く、和包丁にも最適である
白紙1号
刃物用として特別に作られた不純物の少ない炭素鋼、切れ味抜群
白紙2号
白紙1号に対し硬さを下げ、ねばり性を上げてあり刃欠けしにくく使い易い
熱処理方法
熱処理は、鋼(ハガネ)を熱したり、冷やしたりすることによって、その鋼の用途に合わせて性質を変化させる処理です。
代表的な熱処理方法には主に以下の4つの処理方法があります。
焼ならし
鋼を熱し、空冷すことで、鋼の中のひずみを取り除き、鋼の組織を均一化、微細化します。
焼なまし
鋼を軟らかく粘りをもたせるようにする熱処理で、熱してから、できるかぎりゆっくり冷やす方法です。
組織を均一にする役割もあり、処理が不完全な場合には鋼材の組織が不均になり加工の際に曲がりや反りが発生し、焼き入れした時に硬さにバラつきが生じます。
焼入れ
鋼を硬くする熱処理です。鋼を熱したあとで、水や油などを使い急速に冷却する方法。
このままでは、硬くはなりますが、もろくなってしまうので「焼戻し」という熱処理が必要になります。
焼戻し
「焼入れ」処理を行った後で硬くなりもろくなった鋼に今度は ねばりを加えます。
もう一度、適当な温度で熱したあとに冷ますことで、硬さとねばり気を合わせ持つ事ができます。基本的に「焼入れ」と「焼戻し」はワンセットで行い、硬くて丈夫な製品づくりに生かされています。